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荒川尚也の展示


ある日、いつもの犬の散歩道が鹿よけの為の柵が作られました。 柵は自分で開けて入ることもできますが、なんだか億劫になり、散歩コースが徐々に変わってきました。 そう、作り手が語ってくれました。 獣害被害が深刻となり、丹波丹後の里では、鉄柵が張り巡らされるのは珍しいことではないです。 そして、鉄柵が張り巡らされた里は、獣害の心配も軽減され、そのうち多くの人は鹿のことも考えなくなります。

でも、ひとりの作り手は、柵の向こうの鹿のことを思っていたのでしょう。大きな角を持ち、優雅に立つ姿が美しく、人に会うと、じっと立ってこちらを見ている姿を、、、

この鹿の制作者は荒川尚也さんで、等身大の鹿をガラスで作っています。この森の展示室の為に、数ヶ月仕事の合間に作っていたそうです。何回も失敗を重ね、でもたぶん、この失敗が次につながるし、何よりも森の中に鹿を置きたいという一心で。

出来上がった荒川さんの鹿を森の展示室で見た時、ぞわっとしました。そしてその感覚がどこから来ているのか?自分の中で消化するまでしばらくかかりました。 世の中には多くの見えない壁が存在し、その壁によって守られているのかもしれません。でも壁の存在でその向こうが見えにくくなっていると思います。北朝鮮と韓国、そして日本。アメリカとメキシコ、日本の中でも原発被害で生まれた30キロ圏内とそうでない場所。ファッションのこっち側と向こうで働く労働者、、、 そんな壁の向こうを見てみる視線のやさしさをこの作品から感じていたのかもしれません。 荒川さんの作った鹿は、こんなことを言っているように思いました。「生きているって素晴らしいことなんだよ。」 そんなことを素直に作品に表している。

荒川さんは今年の森の展示室を見て、こう言っていました。 「もしかして、誰も見ないかもしれない。でも、こうやって一生懸命自分の内にあるものと向き合って制作してきて、このわち山野草の森に置きたいって思いでやってきた作り手の集まりのような気がする。こんな展覧会他にあまりないんじゃない?」 作り手の皆様、ありがとうございました。 そして、この森の展示室を体感してくださった皆様。 見にこれなくても応援してくださった皆様。 何より、この森を維持管理してくださっているわち山野草の皆様、京丹波町の皆様、ありがとうございました。


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